どこか違うなぁと思っていたら

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どこか違うなぁと思っていたら、仏法聞いておられた

どこか違うなぁと思っていたら、仏法聞いておられた 愛知県 二宮英治

牧場駆け出しの頃、山間部の酪農家から、牛の様子が変だと電話がありました。駆けつけると、耳が垂れ下がり、目のすっかりくぼんだ乳牛がいました。

診療に通って2週間。元気になった牛を見て「もう大丈夫です」と告げると、農家の主人が言うのです。「ほとんど乳が出なくなっちゃったから、処分するわ」と。

一瞬、耳を疑いました。では治療したのは何だったのか。

牛はそのまま食肉処理場に送られました。生産高が飼育費を下回れば、牛は殺されるのです。「動物のためにあるのが獣医」と思っていましたが、突き詰めれば人間のためだったと知らされ、言葉にならぬ脱力感に襲われました。

しかし、ある農家での昼食時、主人がふと、つぶやくのです。

「牛はかわいそうだね。駄目だとすぐ首を切られる。寿命ならともかく、よー働いた牛を食肉処理場に送る時、いつも胸が痛む」

獣医以上に、飼育してきた農家のほうがつらいのに、殺さねば自分たちが生きていけない。酪農の厳しい現実を見た思いがしました。

仏法を知る獣医として何ができるかを考えた時、まず、「農家の方の気持ちが分からねば」と思いました。最初の年には泊まり込みで農作業を手伝い、一緒に食事もする中で、苦難の時期にある畜産業界の実状も見えてきました。

ミネラルウォーターより牛乳の価格は安いのに消費は減少ぎみです。短期間で、売り上げが三割もダウンしたとの嘆きも聞きました。子供が跡を継がず、廃業する農家もあります。

来秋から、糞尿処理をしなければ罰せられます。でも、設備に数百万はかかるのです。ある年配の酪農家は、畑の肥料として散布させてもらっていたましたが、今年から断られ、
「もうやめるしかないわ」と、がっくり肩を落としていました。

苦労の絶えない農家の姿に、「何とか力になりたい」と、仏教の教えに従い、相手の為に徹しようと思いました。

牛の病気を治すだけなら、マイナスがゼロになるだけです。
予防に重点を置いてこそ、経営改善も図れるのでは、と思いました。

農家を悩ませる牛の病気の一つに乳房炎があります。原因は乳の搾り過ぎですので、各農家に、推奨される搾り方の指導を始めました。

経営に直結する「乳量」が増えるよう、えさの配合も研究しました。霧を飛ばす装置を造り、牛舎を涼しくしている農家があると聞けば、暑さで牛を死なせた農家に伝え、一緒に見学に行ったりもしました。

こうした努力の積み重ねで、農家皆さんは家族のように心を開いてくれました。

私が「親鸞聖人のみ教えを聞いている」と言ったとき、農家の奥さんは、
「若いのに珍しい。道理で熱心に私たちのこと考えてくれて。息子より優しいわ」と言い、「こんな獣医さんが聞いている教えなら安心」と、友人を連れて聞法に来るようになりました。

経営や身内の相談までしていた70代の主人は、「どこか違うなぁと思っていたら、仏法聞いておられた」と納得し、いつか自分も聞かせてほしいと私に言いました。

そう言ってもらえた時、学生時代から十数年、聞法させていただいたことを喜ばずにおれないのです。

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