葛藤する救命医の心

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親鸞会同窓会サークル
ルボアール

親鸞学徒の医師たち

  1. 荒廃する医療界に挑む

  2. 心身ともに“抜苦与楽”

  3. 再受験 六度目の春

  4. 葛藤する救命医の心

親鸞会ルボアールとは

Revoir(ルボアール)とは仏語で「再会」の意。ここは学生時代に、共に親鸞会で仏法を学び、卒業して社会人として活躍する親鸞会会員の、現場の声を集めたものです。

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葛藤する救命医の心

太陽と雲深夜3時、緊急電話で飛び起きる。「急性心筋梗塞です。先生、至急お願いします」。

当直の看護師からだ。広松医師(仮名)は急いで病院へ行き、すぐに心臓カテーテル検査を開始。右手首の動脈から管を入れて心臓まで到達させ、閉塞した冠動脈を特殊な風船で拡げて血液を循環させる。一分一秒争う手術で患者は一命を取り留めた。

「しかし手術が成功し、社会復帰できても、死からは逃れられない。仏縁に恵まれなければ、この延命は何だったのかと、自分の苦労が無駄に思え、むなしくなります。『無理非道 飲まず食わずに金溜めて 仏法聞かずに死ぬる馬鹿者』であってほしくない」

■人間の本性

「病で苦しむ人を助けたい」と思ったのは富山大学に入り、仏縁を結んだころだった。4年後、富山医科薬科大学に再受験で合格した。医師免許を取得して、循環器内科を選んだ。神奈川県や京都府等の病院に勤め、現在は総合病院に循環器内科医長として勤務している。

「心臓の専門医は夜中でも早朝でも、いつ緊急手術の呼び出しがあるか分かりません」
朝昼晩と食事をし、夜には入浴して布団で休むような、普通の生活は望めない。
「いまだにテレビも冷蔵庫も持っていません。ゆっくりみそ汁が飲めたら、それだけでもありがたいですね」

救急外来以外でも、患者が集中治療室にいる期間は、深夜2時間ごとに起こされる。
「急に苦しみだしました」
「眠れないと訴えています」と報告する看護師に指示を出さねばならない。
「急性心筋梗塞の方の命を助けても、合併症が起き、家族から病院が訴えられることもあります。救命自体が難しいのに、死ななくて当然と思われているからでしょう」

患者本位の医療を心がけているが、「あさましい心ばかりが知らされる」と竹田医師は告白する。
「夜中に何度も起こされると、患者さんが困っていると分かっていても、腹が立つのです」
患者が亡くなった時でさえ、
「死を悼む気持ちより、やっとゆっくり風呂に入って休めるとホッとする心があるのです。なぜこんなことを思うのか、医師の資格なんてないのだと苦しみます。こんな心との闘いは、想像もしていませんでした」。

 小慈小悲もなき身にて
 有情利益はおもうまじ
 如来の願船いまさずば
 苦海をいかでかわたるべき (親鸞聖人)

“少しぐらいは他人を哀れみ、悲しみ、助ける心があるように思っていたが、とんでもない錯覚だった。親鸞には、慈悲のカケラもなかったのだ”

聖人のお言葉がしのばれ、だからこそ聞法に命が懸かってくるという。

「壇上から頂いたダイヤのような仏法を患者さんにも届けたくなります」
日々の臨床を仏法をお伝えするご縁にしたいと考えていた時、このお言葉を思い出した。

 にこやかな笑顔と、明るいあいさつほど世の中を楽しくするものはない

「ちょっと目元の筋肉を動かせば笑顔になれます。それがないと、患者さんと仏法の架け橋が生まれないんですよ」

仏縁を喜ぶ患者と家族の笑顔に、最もやり甲斐を感じている。「ミスは絶対許されないから全力で治療します。しかしそれだけでは、循環器内科医は続けられない。生命の尊厳を説く仏法がなければ」

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