荒廃する医療界に挑む

title親鸞会 ルボアール
親鸞会同窓会サークル
ルボアール

親鸞学徒の医師たち

  1. 荒廃する医療界に挑む

  2. 心身ともに“抜苦与楽”

  3. 再受験 六度目の春

  4. 葛藤する救命医の心

親鸞会ルボアールとは

Revoir(ルボアール)とは仏語で「再会」の意。ここは学生時代に、共に親鸞会で仏法を学び、卒業して社会人として活躍する親鸞会会員の、現場の声を集めたものです。

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荒廃する医療界に挑む「心に光与える医師に」

第1回 荒廃する医療界に挑む 「心に光 与える医師に」

「おはようございます」。病院の階段を駆け上がりながら、大原久雄医師(仮名)は、すれ違う一人一人に明るく声をかけた。午前8時。最初の回診は、昨晩遅く手術した女性患者だ。

「傷、痛いですか?手術は成功しましたからね」。顔を近づけ笑顔で話しかける大原医師に、まだ酸素マスクをつけた患者は、にっこりとうなずく。この日、胃ガンの手術を受ける男性患者のベッドでは、「緊張しますか。大丈夫ですよ」と、その手を握った。

外来の診察は9時に始まった。直腸ガンの術後検査に来た人に、レントゲン写真を指しながら、「お疲れさまでした。場合によってはリンパ節がはれてきますが何ともないです。おなかに水もたまってないし、肝臓や肺にも転移はないです。心配いりません」。

採血や抗ガン剤の点滴の時も患者との会話は途絶えない。

「人の命を助けたい」と京都大学医学部に進んだ。「医学の歴史に名が残せる仕事を」と思ってはいたが、「ではどんな医師に?」と考えると漠然としていた。

ところがやがて、その「答え」を知る出来事が起きた。親鸞聖人のみ教えとの出遇いだった。「生きる目的を知らされました。医学の世界で業績を残せても、死を前にしたら何の喜びにもならない。『本当の幸福になって仏心を体現した医療を』とお聞きした時、これだ!と奮い立ちました」

昭和60年に医師免許を取得し、消化器外科医として大学病院に勤務。肝臓ガンに関係する遺伝子の研究で医学博士の学位を受けた。医大の非常勤講師などを経て現在は、総合病院の外科部長として、月に約20件の手術を行う。

そんな大原医師に、「不安なことは何でも聞ける」と信頼を寄せる患者は少なくない。大阪府の三谷友里恵さん(63)も、その一人だ。

内藤さんが肝臓ガンに冒され、京大附属病院で初めて大原医師の治療を受けたのは、5年前だった。同室の患者たちは、「あの先生の怒った顔、見たことないね」と話していたという。「廊下でも優しく声をかけてくださるんです」

ある日深夜の回診で、大原医師の後ろ姿を見ると、髪に手術帽のあとがくっきり残っていた。「手術が終わったばかりなんだ。そんなこと一言も言われず……。申し訳なく思いました」

大原医師の転勤後も三谷さんは電話で治療の相談をした。

平成13年、ガンが再発して、三谷さんは大原医師の所へきた。京大外科教授の診察を受けてはいたが、「再手術は、大原先生以外考えられなかった」と言う。手術は成功し、ガンは完全に摘出された。

大原医師からは、少しずつ仏法の話も聞いていた。「恩徳讃」を聞いた時、「ああ、これだ……。これがあるから大原先生は違うんだ」。謎が解けた気がしたという。

 如来大悲の恩徳は
 身を粉にしても報ずべし
 師主知識の恩徳も
 骨を砕きても謝すべし

「大原先生の姿だと思いました。お経は難しいけど、生きている人が仏法精神を実践してはると分かりやすい。肉体も精神も大原先生に助けていただいた。そんなお医者さんは本当にいません。普通やったら私もう、死んでいたと思うんです」

取材の日の午後、胃ガン摘出手術を見学した。3時間を超える手術が終わり、汗だくで手術室を出た大原医師に、「肉体の病の治療が、まず大変ですね」と声をかけると、間髪をいれず、次の答えが返ってきた。

「病気が治って喜ばれる姿を見るのは大きなやりがいです。しかし、再発もあります。別の病気にもかかられる。例えば、手術で半年の命を3年延ばしたなら、その間に仏縁を結んで、生命の歓喜を得ていただきたい。そうでなければ、延命の意味はないですから。治療を縁として、人生の目的を知っていただくことが最高の幸せです」

くつろぐ間もなく、急患の知らせが届いた。その晩、再び手術室に。時計を見ると、午前零時を回っていた。

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