元暴力団員 塀の中から感謝の手紙

title親鸞会 ルボアール
親鸞会同窓会サークル
ルボアール

親鸞学徒の弁護士たち

  1. 「親鸞学徒ならできる」被害者の心の救済

  2. 心にしみた「佐渡オケサ」 暴力団幹部の改心

  3. 「生きる価値があるんや」

  4. 敏腕女性弁護士の奮戦

  5. 「先生にだけ話します」孤独な被告人心開く

  6. 「ヤミ金地獄」から救出ITの推進に挑む

  7. 元暴力団員 塀の中から感謝の手紙

親鸞会ルボアールとは

Revoir(ルボアール)とは仏語で「再会」の意。ここは学生時代に、共に親鸞会で仏法を学び、卒業して社会人として活躍する親鸞会会員の、現場の声を集めたものです。

TOP > 弁護士達の明日 > 元暴力団員 塀の中から感謝の手紙

元暴力団員 塀の中から感謝の手紙

第7回 元暴力団員 塀の中から感謝の手紙

チューリップ 「国選弁護人は、報酬も少なく、面倒な仕事だという人もいます。でも、どんな被告人であろうと、仏縁を念ずればこそ、何度でも拘置所へ足を運べるのだと思います」と荒木浩治弁護士(仮名)は語る。
 その親身な弁護は、固く閉ざされた元暴力団員の心をも開いた。
     ■
 接見室の鉄の扉を開けると、アクリル板の仕切り窓の向こうに元暴力団員のA氏が座っていた。
 がっちりとした肩幅に、丸刈り頭。ぎょろりとした目が印象的だった。50代前半で、覚醒剤の使用で捕まっていた。
 簡単に挨拶を済ませると、すぐ本題に入った。
「なぜ、控訴しようと思ったのですか」
 前科五犯のA氏に、一審の懲役1年半は重くない。控訴しても減刑の見込みはなかった。
「いろいろと、事情がありましてね」
 その投げやりな言い方は、弁護人の存在を拒絶しているようにも聞こえた。しかし荒木弁護士は、アクリル板に耳を近づけ、うなずきながらA氏の話を聞き続けた。何を望んでいるのか知りたかった。

 その真剣な姿に、A氏はぽつりぽつりと語り始める。何でも、暴力団から破門されていたA氏は、刑務所で服役中の暴力団員から嫌がらせを受けるのを恐れ、判決の先延ばしを狙っていたという。

 1週間後、再び拘置所で面会すると、A氏のほうから、「実は案じていることがあるんです」と切りだしてきた。
 母親に出した手紙の返事がなく、心配だから一度電話してもらえないか、とのことだった。快く引き受けた荒木弁護士は、A氏と母親との間を、何度も往復した。

 4度目の面会になると、A氏はかなり打ち解け、悩みを口にするようになる。「先生、自分はどこの刑務所ですかねえ。本当に命を狙われるかもしれないんで、不安ですよ」
 さらに、「借金をどうしようかと思っているんです」と出所後のことまで相談してきた。荒木弁護士が、「整理して、ゼロからスタートしましょう」と励ますと、A氏はうれしそうにうなずいた。

 5回目、最後の面会で、A氏は照れくさそうに言った。
「自分のような者が言うのは身分不相応なんですけど、出所したら……、顧問弁護士になってもらえませんか」
 これには、驚いた。被告人からこんなことを言われたのは初めてだった。でも、うれしかった。思わず笑みがこぼれた。
「分かりました。その時、話し合って決めましょう」
 荒木弁護士が退室する時、A氏は立ち上がって、
「ありがとうございました」と、礼儀正しく頭を下げた。
     ■

 判決後、荒木弁護士は、刑務所にいるA氏に、手紙を書いた。高森顕徹先生の著書を添えて。暴力団で過ごしたつらい日々から立ち直って、幸せな道を進んでもらいたいと思ったからだ。
 A氏から手紙が届いたのは、その3日後である。封を切ると、そこには、あの風貌からは想像できないほどきれいな文字が並んでいた。目の前が潤んでくるのが分かった。

前略
 差し入れと一緒に手紙を受け取りました。
 今まで、こんなこと一度もなかったものですから、まったくもって、驚いた次第です。私にとって、忘れられない思い出と成りました。
 拘置所まで何度も足を運んで貰うたびに申し訳ないなァと思っておりましたが、先生が今までの弁護士の中で、一番話しやすかったものですから、つい余計な事まで相談させていただきました。この御縁を大切にし、何事もなく出所して落ち着きましたら、先生の力を借りようと思ってますので、また宜しく願います。
 荒木先生、御多忙かと思いますが、風邪など注意され、御自愛下さい。
 学がないので、気持ちをうまく文書に出来ませんが、感謝、感激です!早速、読ませて頂きます。
 今度は塀の外で……。
        草々

・・・親鸞会同窓会 ホームへ戻る・・・